「彼氏」㉑ライナスの毛布
「ああ、それ?」
サクライくんはボロ布を抱きしめた。
「コレが無いと眠れないんだ~。」
おおっ!
ズタボロの布は、所謂ライナスの毛布であったか!
良いの良いの、精神安定剤なんだもんね^^
別に否定しているわけじゃないの、でも32歳のオッサンなんだから、少し恥ずかしがった方が好感持てると思うのよね。
そもそもすごく汚れていて、臭ってきそうだよ。
「実家に持って帰ったらお母さんが破れた所を縫って洗濯してくれるんだ。」
出た(*_*;
こんな時になんというのが正解かわからないので
「ふ~ん」
とでも言っておく。
他人の嗜好や親子関係を否定するつもりはないので
「そうなのね、ところで…」
と違う話題に移ろうとしたのだが、サクライくんはまだ続けたいようだった。
「奥さんも縫ってくれたところがあるんだよ。
ここかな、あ、違うここだ!」
見つけられてはしゃいでいるのが現在の彼女にどう映るか考えたこと…無いだろうな(-_-;)
別れた奥さんは裁縫も得意で、子供が幼稚園に行くようになったらバッグなどを手作りすることになるのだからと、嫁入り道具に高級なミシンも持参していたらしい。
水を差すようだが、最近は幼稚園バッグ手作りとか、そういう負担を家庭から排除する傾向にあるらしいよ。
なんて言わないけど。
「奥さんTシャツ作ってくれたなぁ。」
Tシャツ?
Yシャツじゃなくて?
それはすごいね(・_・;)
「あれ、どこに行っただろ。」
ゴソゴソと締まりきっていない小さなクローゼットを探り始めた。
それにしても、別れてからもこんなにずっと後々の彼女にまで語られて…私はだんだん別れた奥さんに同情するようになっていた。