無職さん㉑もう一緒にいなくてもいい
無職さんが会計を終えて、ユニクロのショッピングバッグを嬉しそうに掲げて戻って来た。
特に用事もないが、これ以上一緒にいる必要も無いので
「じゃあ、帰りましょうか。」
と促すと
「良かったら洋服選んでもらったお礼にコーヒーでもごちそうしますよ。」
と言われた。
いやいや、もうお礼ごっこは良いよ(;´∀`)
そもそも洋服選んでないし。
だから
「いやいや、ぜんぜん何もしてないですよ!
それに、まだ仕事の資料とかまとめないとならないので(ウソ)
もしまだお買い物続けられるようなら、ここで失礼します^^」
と言うと
「じゃあボクも帰ろうかな。」
と一緒に駐車場に向かう事になった。
駐車場で
「それじゃあ^^」
と車に乗り込み、無職さんがいなくなったらお化粧でも直そうと思っていたが、無職さんが車の中から手と口パクで
「先に行ってください。」
と促してきた。
え…(゚Д゚;)
私が先に行って、家の方までついてこられたら困る。(自意識過剰)
そこで、スマホを耳に当てて
「(仕事の)電話をしないとならないので、ごめんなさい」
みたいなジェスチャーをすると、無職さんも
👌
とジェスチャーで返して来た。
あ~よかった(;´∀`)
去り際に手を軽く上げ、走り去って行く無職さんの小さな車を後ろから見送りつつ、やっぱり車は“軽”じゃない方が良いな。と思うのであった。
無職さん⑳譲れないオシャレのこだわり
気を取り直して
「こんな感じが良いんじゃないでしょうか。」
とポスターを指さすと
「あ~…」
とあまり気乗りしない感じだ。
「あまり好みじゃないですか?」
と問うと慌てたように
「いや、そうじゃないんだけど、こういうパンツっていくつも持っているから、また同じのが増えちゃうかなって。」
(おそらく)何十年も前のユニクロのフリースを着ているという事は、きっとユニクロ愛用者なのだろう。
だからこのパンツと同じようなものを何着も持っていても不思議ではない。
だがきっとそれらはもうクタクタで、よれよれで、デザインも似て非なる物なのではないかしら。
それに関してもうこれ以上特に何も言う気がしなくなったので
「じゃあ今持っているものをもう一度見てみて、合わせてみたら結構使いまわせるかもしれませんね。」
と無責任な事を言って、ユニクロを出る事にした。
無職さんもそれに対して
「そうですね!確かにそうだ!」
と嬉しそうに言った。
「じゃあとりあえずこのTシャツ買ってきます^^」
とレジに向かって行った。
私はいったい男性に何を求めているのだろうか。
オシャレである事なんて、結婚相手に望んではいない。
その気持ちは今でも変わっていない。
だが無職さんの場合、一般的なオシャレではない(ことは間違いない)が、無職さんにとってはおそらくちゃんとしたこだわりがあって、譲れないポイントがあるのだろうと思う。
無職さん⑲収納が広いのかな、なんて(;´Д`)
無職さんから洋服を選んで欲しいと言われ、食事のあとでユニクロに行く事になった。
ユニクロっていいよね、ショッピングモールはもちろん、いろんなところにあるから^^
「じゃ、早速行きましょうか。
あ、もちろんここは私にお任せください^^」
と言うと無職さんは
「本当に良いんですか?
なんだか申し訳ないですね。」
と本当に申し訳なさそうな表情をしていたが、無職の人からお金を取る方が気が引けるというもの。
支払いに関しては本当に問題は無いし、全くイヤな気持ちにならなかった。
それは本当。
ユニクロに入り、ずんずんと奥まで入って行くと、ほらね、ポスターみたいなのが貼ってある。
このモデルさんはスタイルの良い外人さんだが、トレーナーとパンツ、スニーカーまであわせて買えば良いではないか。
そう思って無職さんに
「こんな感じよくないですか?」
と振り返ると、そこに無職さんの姿はなかったΣ(・ω・ノ)ノ!
なんで、こんなちょっとの間に(;´Д`)キョロキョロ
いた…(゚Д゚;)
無職さんは向こうの方から、なんだか知らないがキャラクターのTシャツを手にしてやって来た。
そうだわ、ユニクロって、キャラTシャツ売ってるよね。
「それ買うんですか(;´∀`)?」
と問う私に
「Tシャツって何枚あっても良いですよね。」
と嬉しそうに答える無職さん。
それはお金に余裕があって、収納もたくさんあって、いや、収納無くても着古したものはすぐに捨てる事ができる人のセリフだよ。
少なくとも何十年も前のフリースを着ている人のセリフではないと思うの。
と心で毒づく私であった。
無職さん⑱ユニクロ最高!
洋服を選んで欲しいと言われ、悩んだ結果、とてもいいお店を思いついた。
それは誰もが知る
ユニクロ👕
今の無職さんなら、ユニクロでも十分オシャレになるはずだ。
いや、むしろユニクロでシンプルに今の流行を取り入れればいいではないか。
それにユニクロなら店員さんの邪魔は入らないはずだし、こちらの気兼ねも無い。
あ…もうしかして、無職さんはオシャレなお店に入りたかったりして?
と思ったので、一応聞いてみることにした。
「私が思うに、久しぶりに洋服を買う時って、お店のマネキンとかポスター見て、上から下までそのまま買っちゃえば間違いないと思うんです。
ユニクロってちゃんと流行に沿っているから、ユニクロで買うのがほぼ間違い無いかと。」
そんな私の無茶な理論に無職さんは感心したように
「なるほど~。」
とこれまた明るくうなずいてくれた。
なんか知らんが、成功したようだ。
ユニクロなら金額面でも心配ないからどれを勧めてもそんなに心配することはないだろうし。
服装さえ変われば、無職さんが素敵になっちゃうかも(;´∀`)!!
ないない←一人突っ込み
無職さん⑰洋服を一緒に選ぶ
無職さんは話をするのが好きなのか、食事をしながらも次々と話題を持ち出して会話が途切れることが無い。
決して自分の話だけをするのではなく、ちゃんと気持ちよくコミュニケーションも取れる男性だ。
せめて服装くらい良かったら…などと漠然と思っていると
「マリコさんはこういうところで洋服買うんですか?」
と言われてドキッとした(゚Д゚;)
あ、ショッピングモールでってことね。
「そうですね、見て回るだけで楽しいので、ショッピングモールでもデパートでも。最近はネットでも買います^^」
「そっか、ボクは東京にいた時は仕事ばかりしていたから、土日はぐったりして動けなくなって、外に出る事も滅多になくて、洋服もあまり買ってないんですよね。
必要なかったし。」
なるほど、それがその10数年着続けている洋服の真相か。
とは思ったが、いくら忙しくてもオシャレな人はオシャレなわけで、つまり洋服そのものに興味が無いまま生きて来たのではないかしら(;´∀`)
もちろん
「そうなんですね~大変なお仕事だったんですね~」
と納得したように答えると、無職さんは笑顔で言った。
「良かったら、一緒に洋服選んでもらえませんか?」
え…。
私自身は決して洋服のセンスに自信があるわけではないので、この申し出はちょっと迷った。
だが、私好みの洋服さえ着てもらえれば、意外と素敵になるのではないだろうか?
と思ってしまい
「いいですよ^^」
と答えてしまった。
「じゃあこのあと、ちょっと付き合ってください。」
そう、ここはまさに洋服がたくさんある場所なのだ。
どこに行こうかな(-_-;)
いくらショッピングモール如きと言えど、正直無職さんくらい懐かしいファッションの人とお洋服屋さんに入るのはちょっと恥ずかしい。
そうだ!
良いことを思いついた。
無職さん⑯地方と東京の金銭的価値は違うのか?
無職さんが“本日の定食”的なものを注文したので、気を遣っているのかな?と思ったが、特に何も言わない事にした。
注文してから、無職さんは私に色々と質問をしてきた。
まあ“お友達”なので多少の情報交換は必要だよね。
というか、料理が運ばれてくるまで間を持たせる必要があるからね。
「仕事は〇〇って聞いてますけど、忙しいですか?」
と聞かれ
「このところの騒動で少なくなって来てますね。
5月までは影響が出ています。」
この時はまさか、このコロナ騒動が先の見えない状況になっているとは思わずにいたので少し軽く考えていた。
「無職さんはお仕事探されているんですよね?」
こんな事を聞いてみたのは私の狡さとでも言おうか。
第一印象では決して好みではなかったのだが、やはり私にはあとが無い。
これから先きちんと就職する予定があるならまだ、やっとできたこの縁を切る勇気はないのだ。
無職さんは
「そうなんですけど、当然東京の時みたいな給料のところはなくて、悩んでるんですよね。」
などと言うではないか。
やはりそうか。
私はずっと地方で生きて来たのでそういう面に無知なところがあるのだが、金銭面で地方が劣るのは当然の事だ。
その代わり生活費だってかなり安いはずだと思うので、そこはどちらを取るかと言ったところではないのか?
そんな疑問を見透かされたのか
「こっちに帰ってきたら車は必須だし、交通が発達しているのは中央だけなので、なんだかんだでお金がかかりますよね。」
と言われてしまった。
そう言われたら、確かにそうだよねと納得してしまうのが、私の芯の無さか。
いやいや、それでもUターン就職することを選んだのだから、ある程度は妥協しないとならないだろう。
とはいえ、もし私が無職さんと結婚することになったら、やはり金銭的なことはかなり重要な条件なので、簡単に妥協していただくわけにはいかないのだが(;´∀`)
もし自分が無職さんの彼女なら、36歳休職中の彼氏にどんな言葉をかけるだろう。
優しい言葉をかける事ができるかな(;'∀')
無職さん⑮消毒って言われてるじゃん(;´Д`)
ショッピングモールに着いて車から降りる時、無職さんは上着を着ていた。
さっき会った時には懐かしいデザインのゆったりタートルだったが、その上に、これまた懐かしい感じのフリースを着ていた。
そのフリース、私が学生時代にユニクロで買ったのに似ている。
と思ったが、もちろん口にすることはしなかった。
同じセンスと思われたくなかったので(-_-;)
レストラン街に到着し、ぶらぶらと見て回ると、心配しなくても行列の出来ているお店など回転寿司くらいのものだった。
「和食、洋食、中華、どれが好きですか?」
と尋ねると
「昨日中華だったから、和か洋…和食かな。」
と返って来たので、一番近くて目についた定食屋さんのようなお店に入る事にした。
席に案内されてすぐ、お水とお絞りが運ばれてきたのだが、無職さんが
「はいどうぞ」
と拭いていない手でお水を渡してくれた。
…( ゚Д゚)
多少潔癖なところがあるのは認めるが、それ以前に、昨今の“消毒しましょう””手を洗いましょう“というアナウンスが染み込み過ぎて、この頃には自分の手ばかりかテーブルも全て除菌シートで拭くようになっていた私にとって、かなりのショックな出来事だった。
無職さんとは直接関係ないのだが、最近よく思うことがある。
いまや習慣によって、消毒癖が培われた人が数多くいるのではないだろうか。
私を含め、コロナ騒動が収束しても、そんな人たちが男女間の触れ合いを警戒無く行う事ができるのだろうか、と。