「彼氏」⑳広告に偽りあり
おかしい。
サクライくんの部屋の扉を開けると、想像と違う風景が広がっていた。
いや、独身男性の部屋ならこんなもんだろうと思うし、キレイ過ぎると私は気後れすると思う。
だが彼は以前
「シンプルで何もない部屋」
と言っていた。
この部屋は何もないと言うより、物で溢れかえった部屋だと思う。
テレビにはゲームのコードが繋がれたままだし、漫画雑誌とDVDが山積みだ。
もしかするとシンプルな部屋だったのかもしれないが、片付けも掃除もしないうちにこうなっている事に、本人も気付いていないのではないだろうか(-_-;)
離婚後一人暮らしを始めたというワンルームのこの部屋。
掃除機の姿も見えないから、入居以来一度も掃除していないかもしれない。
窓際には、彼の生活の全てがここで完結すると思われるソファベッドが置かれている。
(回想)「ウチはなにもないシンプルなモノトーンの部屋だよ」
(―_―;)
ん?
ふと見ると布団の上にボロボロの継ぎ接ぎだらけのバスタオルのような丸めた布が置かれてあった。
「何、これ?」
大きな雑巾みたいだけど
「ああそれ?」
サクライくんは嬉しそうだった。