院長④今度…何を言おうとしたの?
彼の話はまだまだ続く。
「幼い頃から自分が兄よりもなんでも出来が良かったんですよ。」
とか
「兄がいつも嫉妬していました。」
それに加えて
「高校時代にラグビー部だったんですが、ケガをして、ほぼ決まっていたスポーツ推薦が受けられなかったんです。」
あれ、医者になるつもりだったのに、スポーツ推薦って…。
時々話が合わなくなるが、とにかく文武両道でなんでも出来た(る)と言いたいようだ。
マツダ先生はこうしてずっと自分の人生の不満を、自慢に置き換えながら生きているのだと思った。
医者になる希望は叶わなかったが、親の土地に自分の医院まで建てて貰って、恵まれた人生だと思うのだが。
よく思う。
(私を含め)「足るを知る」事が出来ない人間のなんと多いことかと。
私は知っている。
自分が「足るを知らない」という事を。
だが、他人から見ると自分が思っている以上にまだまだ「足るを知らない」のかもしれない。
不満の多い人だが、似た者同士、身体のコリを解されながら、マツダ先生が私を気に入ってくれるのであれば、交際してもいいかな…などと思い始めていた。
ああ、でもまだ付き合ってもいない人にこんなに身体を触られちゃうなんて…などと一人照れていた時だった。
マツダ先生が口を開いた。
「あの、今度食事にでも…」
えっ?なになに?
その時だ、医院の玄関扉が開いて、次の患者が入ってきた。
チッ(# ゚Д゚)