「彼氏」㊱沸点が低いし斜め上
年始のデートの約束を取り付けようとしたら、大切な家族との時間を大切にしたいから会えないという返事だ。
私は今、自分の思い通りにならない事に腹を立てている。
こんな時は冷静になろう。
「ランチ、どうする?」
怒りは収まらないが、このまま来年を迎えるのも辛いので、仲直りしようと思った。
「そうだなぁ、このあたり何かあるかな。」
サクライくんもそう感じたのか、積極的にお店を探そうとし始めた。
「そういえばその信号の先に、キッシュの有名なお店があるよ!」
「キッシュかぁ、そんなに好きじゃないかな。」
「あ、そうなんだ、残念。」
文字だけだとわかりにくいが、決して私は責めたわけではなく、じゃあ他にはどこがあるかなぁと、次の候補を考え始めたところだった。
するといきなりサクライくんは大きな声で、しかも口角を片方上げて意地悪な顔で言った。
「なんだよ!
ああそう、じゃあ好きでも無い食べ物を好きって、言わなきゃならないのかよ!」
ぽか~ん(*_*)
正直驚いた。
まるで小学生のようだ。
私が、キッシュに賛成しないことで責めていると感じたのだろうか?
私は静かに無表情で言った。
「今の会話でどうして怒るのかわからないな。」
「…ごめん」
すぐにハッとしてサクライくんは謝ってくれたが、車内の雰囲気は険悪だった。
サクライくんはこれまでも、自分の意に沿わない事があると声を荒らげていたのでは無いだろうか。
私はそれ以上ランチの候補を挙げることはせず、彼も行きたいとは言わなかったので、そのまま最寄り駅で彼を降ろし、別れた。
それが昨年最後の別れだった。