Kさん213『普通は普通なんだよ!』
『は?
なんだよ、何が言いたいんだよ。
普通が嫌なのかよ?
普通の能力がある人間はそんな事にいちいち目くじらを立てない。
普通って言われたくらいでイラついてるってことは、自分が普通じゃないって事を認めてるって事だ。』
ため息が出る。
私は本来おしゃべりな方だが、Kさんと会話していると言葉を封じられて本当にストレスが溜まる。
Kさんに言葉が通じるとは思っていないが、伝えてみよう。
『Kさんは普通という言葉をよく使うけど、Kさんにとっての普通は、私にとっての普通ではない事もあるよ?』
ここまで言って、あ、以前もこの話、したことあると思った。
するとKさんこそ図星だったのか
『普通は普通なんだよ!』
と大きな声を出した。
『マリコちゃんには一般的な普通が通じないみたいだけど、普通、社会人として生きて行こうと思ったら、出来なけれなならない事があるんだよ。
それができていないから教えてあげたら、自分の普通はみんなの普通じゃないって、逆ギレかよ!
自分中心で世の中が回っているとでも言うのかよ?
そんな事だから普通の生活ができないんじゃないのか?
普通の仕事が出来ないんじゃないのか?』
すごい。
きっと勢いで言っているのだろうが、私の仕事を、他の人には出来ない素晴らしいことだと言っていた同じ口が、普通じゃない(から劣っている?)と言っているのだ。
いや、もういちいち傷ついている場合ではない。
とにかくKさんから「別れたい」と言わせなければ。
信じられないかもしれないが、私は既に涙が止まらなくなっていた。
弱みを握られたくないため、泣いている事を悟られないように小さな深呼吸を繰り返した。