無職さん⑭身の程知らずの価値観
さすがの私もここまでやってくれて何もお礼をしないなんてことはできない。
時間もちょうどお昼を過ぎたところだ。
本人もわかっていたかもしれないが
「お礼と言っては少ないですが、ランチをごちそうさせてくれませんか?」
と申し出ると
「え、そんなの良いですよ。」
と答えてくれたのだが
「いえいえ、そうしないと私の気が済まないので。」
と押すと
「そうです?じゃあお言葉に甘えます。」
とあっさり承諾してくれた。
借りは作らないに越したことはないからね(;’∀’)
「どこか良いところありますか?」
と聞かれ、彼氏や女友達とのランチなら行きたいところはそこそこ思いつくのだが、特別な感情の無い相手との食事となると考えるところがある。
近くにファミレスはあるが、お昼時なのできっと混んでいるだろう。
それで思いついたのが、近くのショッピングモールだ。
あそこのレストラン街なら選択肢も多いから、空いているお店に入れば良いのだ。
ということで提案すると、快諾してくれた。
(´▽`) ホッ
食に拘りのある人でなくて良かった。
それぞれの車で行く事になり、無職さんが先に駐車場を出た。
後ろからその姿を見ているのだが、やはり”軽”というのはコンパクトなだけにちょこまかしていて、どうも男性的な感じがしない。
因みにウチの父親も普段は”軽“に乗っている。
父曰く、田舎の狭い道にはこのコンパクトさがとても都合良いらしい(-_-;)
父親は当然(?)女性にモテたいなどという欲望は枯渇した人なのでそれでいいのだ。
こうして外見ばかり見て、まだ会ったばかりの無職さんの、内面をこれっぽっちも見ようとしない、身の程知らずのババアが落ち込んでいる。
長年に亘って刷り込まれた”良い車“の価値観が私をどんどん愚かにさせていく。
無職さん⑬同じ空気を吸うという事
私は世の中の多くの女性と同様、配線などがとても苦手だ。
男性が皆そういう作業が得意だとは思っていない。
だからもし夫となる人も、私と同じ不器用な人だとしたら困りものだ。
配線丸出しの部屋のみっともないことよ。
そんな事を考えていると
「取り付けたので、中に入って来てもらっていいですか?」
と言われて、ハッとして助手席に座った。
そこで改めて扉を全て閉めることになったのだが…
あ、なんというか、落ち着かない(;´Д`)
好きな人とならうれしくて仕方ない車の中という密閉空間も、好きでもない人とだとこんなに息苦しいものだったか。
「こういう感じで録画が始まります。」
とか
「ここに録画されます。」
とか教えてくれているのだが、早く終わらないかなとじりじりしてしまった。
だって車って密閉空間だから、同じ空気を吸う事になるわけで、それがなんだか落ち着かなかったのだ。
それでつい
「なんだか暑いですね。」
と言って、扉を開けてしまった。
とても寒い日だっつーの。
無職さん⑫ちょっとカッコイイかも
ドライブレコーダーを選んでもらうために一緒にお店に来た。
無職さんと会う前は、もしかしてデート気分で選ぶことになるのだろうか?と、少しワクワクしていたのだが、無職さんの車や容貌が想像していたものと違ったため、既にテンションが下がっている。
むしろ、こんな(好きでもない人と一緒にいる)ところを知り合いに見られることはどうしても避けたいとまで思うほどに。
それでつい、早く切り上げたくて
「無職さんのと同じのにしようかな^^」
などと笑顔で言ってしまった。
これではまるで無職さんに気があるみたいだと思ったが、無職さんは
「うん、そうね、悪くないと思いますよ。」
と軽く答えてくれたので、別に気にしていないようだ(;´∀`)ホッ
レジで取付の事などを聞かれたが、無職さんが取付までしてくれるというので、遠慮なくお願いする事にした。
早速駐車場で取り付けてくれることに。
無職さんは
「20分もあればできると思います。」
と軽く言った。
20分…。
きっと20分は早い取付時間なのではないだろうか。
今頃気づいたが、この場で取り付けてもらうという事は、私もこの場にいなければならないということだ(;・∀・)
お店の人にお金を払って付けて貰えば、私はお店の中でぶらぶらしている間に20分くらい過ぎただろうに。
ほんのちょっとのお金をケチってしまったばかりに…。
しかもこの日はけっこう寒い日だった。
車の扉を開けておくのがベストなのだろうが、なかなかの寒さでそれも辛い。
なにより取り付けてくれる無職さんに失礼ではないか。
色々な考えがよぎり、結局寒いのを我慢して、運転席の外から取付作業を眺める事にした。
((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル←本来の意味で
「ここにワイヤー通しちゃいますね。」
と、ワイヤーが見えないように隠してくれている。
不思議だ。
そうやってちゃちゃっと取り付けてくれる様子を見ていると、ふと、(配線とかの細かい作業ができるって男の人ってかっこいいかも…)と思う私がいた。
無職さん⑪男らしかったり女らしかったり
確かに会った瞬間ガッカリした。
しかしそれは相手にだって同じことが言えるはずだ。
それなのにこうして率先してぐいぐい引っ張ってくれるなんて、男らしくって頼り甲斐がありそうではないか。
男らしい(;´∀`)?
ん?
ドライブレコーダーのコーナーに向かってずんずんと先に立って歩く無職さんを見て、なんだか違和感を感じた。
そもそも細身の体型だからかもしれないが、歩き方がむしろ女らしい。
膝が内に入るような歩き方をしているからそのせいか?
少なくとも男らしいという表現はその姿には当てはまらない(;´Д`)
例えるならば、くね、くね(;´∀`)クネ、クネ
あ~そうだ、やっぱりクネクネしてる~(;´∀`)
「この辺りですね。」
( ゚д゚)ハッ!
無職さんの後ろ姿を見つめていたら、目的の場所に到着していたようだ。
そうだった、本来の目的を果たさねば(;’∀’)
「おススメはこうこうこういう機能が付いていて、うんぬんかんぬん~」
正直どれも一緒に見えるし、機能に関しても録画の範囲と時間くらいしか違いがわからない。
どれでもいいので
「じゃあ無職さんが買ったのと同じのにしようかな^^」
と言ってしまってハッとした(゚Д゚;)
これではまるで私が無職さんとおそろいの何かを持ちたいみたいではないか(゚Д゚;)
考えすぎ?
無職さんはどう思っただろう。
無職さん⑩ガッカリしている場合か!
無職さんの車は軽だった。
同じ境遇なら共感してくれる人も多いと思うが、私のような田舎者の価値観として、車はまだまだある種のステータスだ。
軽ということはそれなりの収入なのかと想像してしまう。
いや、そりゃ無職だから無収入なんだけどさ(;´∀`)
それでもやはり東京で長年働いていたと聞くと、貯蓄もちゃんとあるのかなって…そんな希望を抱いていたから。
なんとも無職さんに失礼な話だ(-_-;)
車を見てガッカリしたのを悟られないように、いつもの得意の笑顔で車から降りた。
無職さんも車から降りてきて、私の近くに立ったのだが、ここでまだ勝手にガッカリすることになった。
ニッコリと笑顔で立つ無職さんは、華奢な身体に、さらにぶかぶかのパンツと、ちょっと懐かしいデザインのゆるいタートルっぽいトップスを着ていた。
決してものすごくオシャレな人を想像していたわけではないのだが、これまた“東京で長年暮らしていたのだから”という理由で、少なくともダサいかっこはしていないと…希望していた。
勝手に期待して、勝手にガッカリして、本当に無職さんに対して失礼極まりない(-_-;)
気を取り直して挨拶をした。
「はじめまして~。なんだかご無理を言って申し訳ありません^^」
無職さんはとても感じよく
「いやいや、本当に用事があったのでよかったです。
じゃあ、早速見に行きますか?」
と、お店の中に促された。
なんと感じのいい人だ。
こんな感じのいい人に対して、行き遅れたババアが身の程をわきまえずに勝手にガッカリして。
思い出せマリコ、田舎では男女の適齢期が自分の想像以上にかけ離れているということを。
無職さん⑨田舎者の価値観
無職さんが私の車の隣に車を停め、私に会釈した。
ちゃんと笑顔で。
こんなにちゃんとした感じなのに、私はガッカリしている。
だって無職さん、私が(勝手に)想像した細マッチョではなくて、どちらかというと
細身…華奢?
なんだもん。
そしてその車、ワゴンタイプだとなぜ思い込んだのか、あの頃の自分を責めても遅いが、全体を見たわけではないがすぐにわかった。
軽 🚙
だね(;’∀’)
いや、ここは誤解しないでいただきたいのだが、軽が嫌なのではなく、自分が勝手に妄想したワゴンタイプの車ではなかったからガッカリしているのだ。
なんてね…ウソだ(;´Д`)
私にはわかっている。
田舎では車は単なる移動手段ではなく、一種のステータスだ。
田舎に住んでいて、36歳、独身で、車が…軽。
それはおそらく実収入を如実に反映している…多くの場合。
無職さんの収入は事実0円なので軽でも不思議ではないのに
無職だとわかっていて紹介してもらったのに
実際に金銭的余裕がなさそうなアイテムを見せられた途端にガッカリしてしまった(;´Д`)
それが仮に「車なんて動けばいい。」という考えのもとで選んだのだとしても。
所詮私は田舎者の価値観なのだ。
無職さん⑧あれ?この人(;・∀・)かな?
無職さんに一緒にドライブレコーダーを選んでもらうために、車のパーツを販売しているお店に到着した。
どんな人が来るのかしら(*´ω`*)むふむふ
性懲りもなく新しい出会いに期待する私なのであった。
無職さんの△△という車種がどんなものかわからなかったが、なぜかワゴンタイプだと思い込んで調べる事もしなかった私。
せめてそれだけでもしておけば、ここまで期待することは無かったのに(;´Д`)
待ち合わせ時間より少し早めに到着したので、車の中で無職さんからの連絡を待っていようと思っていると、すぐに無職さんからラインが!
きゃ~~~~~っ!!
『到着してます。』
え?キョロキョロ(;゚Д゚)
どこ?どこ?
この時間、そんなにたくさん車は停まってないみたいだけど?(;・∀・)
キョロキョロしていると、私の車の横に、一台の車がスーッと止まった。
ま、まさか…(;´∀`)
恐る恐る視線をやると、一人の男性が私に向かって会釈した。
あ、この人が無職さんね(;・∀・)
上半身しか見えないが、細マッチョという感じではなさそうな…。